脳卒中後の内反尖足が改善しない理由|歩き方を変えるために必要な4つの評価とリハビリ
脳梗塞や脳出血のあと、 「歩けるようにはなった。でも歩き方が変わらない。」 そんな悩みを抱えていませんか。
このようなお悩みはありませんか?
- 毎日一生懸命歩いているのに歩き方が変わらない
- 足首のストレッチを続けても足が硬いまま
- ボツリヌス療法(ボトックス)を受けても変化を感じにくい
- つま先が引っ掛かり、転びそうになる
- 足が内側に入る「内反尖足」が気になる
実際に当施設へ来られる患者様やご家族からも、 このようなご相談を数多くいただきます。
「こんなに頑張っているのに、歩き方が変わりません。」
「毎日ストレッチをしていますが、本当に意味があるのでしょうか。」
「ボトックスも受けていますが、思ったほど変わりません。」
私は理学療法士として17年間、 急性期・回復期・生活期まで多くの脳卒中患者様の歩行を見てきました。
その中で強く感じていることがあります。
もちろん、内反尖足への治療はとても大切です。
しかし、 足首だけを見ていては、本当の原因を見落としてしまうことがあります。
この記事では、 なぜ内反尖足だけでは歩行能力が改善しないことがあるのか。
そして、 歩行能力を改善するために本当に必要な考え方について、 17年間の臨床経験をもとに解説します。
内反尖足だけを改善しても歩行能力が変わらないことがあります
「足が内側に入るから歩きにくい。」
そのように考える方は多いと思います。
もちろん、それは間違いではありません。
しかし臨床では、 内反尖足は原因ではなく、結果として現れていること が少なくありません。
40代の活動性が高い男性でした。
回復期病院ではロボットを用いた歩行練習を積極的に行い、 歩行能力を獲得されていました。
退院後も介護保険サービスを利用し、 毎日自主トレーニングを継続。
歩く距離も長く、 外出も積極的に行われていました。
一方で、 歩行中は下肢の筋緊張が強く、 足首は内側へ入りやすい状態でした。
定期的にボツリヌス療法も受け、 毎日足関節のストレッチも続けていました。
しかし、 歩き方はほとんど変わりませんでした。
評価を行うと、 私が最初に気になったのは痙縮ではありませんでした。
すでに足関節には拘縮があり、 ご本人がどれだけストレッチをしても、 十分に伸ばせる状態ではなかったのです。
さらに評価を進めると、 姿勢や体重のかけ方、 筋肉が働くタイミングにも課題がありました。
つまり、 歩行を制限していた原因は一つではありませんでした。
もちろん、 「痙縮にはボツリヌス療法」という方法はエビデンスによっても裏付けされています。
実際に効果が得られる方は多くいらっしゃいます。
しかし、 本当に痙縮が歩行能力を制限している原因なのか。
そもそも痙縮なのか。 拘縮なのか。 姿勢なのか。 恐怖心なのか。 感覚の問題なのか。
そこを見極めることが、 歩行能力を改善する第一歩になります。
歩行能力を改善するために重要なのは「原因」を見極めること
- 痙縮なのか
- 拘縮なのか
- 姿勢の影響なのか
- 体重移動ができていないのか
- 筋肉の協調性なのか
- 感覚障害によって力んでいるのか
歩行は、これらが複雑に関係して成り立っています。
だからこそ、 内反尖足だけを見るのではなく、「なぜ内反尖足になっているのか」を評価することが重要です。
痙縮だけが原因とは限りません
脳卒中後に足が突っ張ると、 「痙縮が原因ですね。」 と言われることがあります。
もちろん、痙縮は歩行に大きく影響する要素の一つです。
しかし、 「足が突っ張る=すべて痙縮」ではありません。
臨床では、この違いを見極めることが非常に重要です。
「足が突っ張る」原因は一つではありません
- 痙縮(筋肉が過剰に反応してしまう状態)
- 拘縮(筋肉や関節そのものが硬くなった状態)
- 姿勢の崩れによる筋緊張の増加
- 転倒への恐怖心による過剰な力み
- 感覚障害による異常な筋活動
- 痛みや痺れによるもの
これらは見た目には似ていても、 原因も必要なリハビリも異なります。
例えば、 立っているだけで足の筋肉が強く突っ張る方でも、 姿勢を整え、安心して体重をかけられる環境をつくることで、 筋緊張が和らぐことがあります。
反対に、 どれだけ姿勢を整えても関節が動かない場合は、 拘縮が大きく関係している可能性があります。
私たち理学療法士が最も大切にしなければならないことは、 「何を行うか」ではありません。
「なぜ、この歩き方になっているのか」を分析することです。
歩行は非常に複雑な動作です。
足首だけでなく、 体幹や骨盤、股関節、膝、 そして全身の協調した働きによって成り立っています。
さらに、 歩くことへの不安や恐怖心が、 無意識に筋肉を緊張させてしまうこともあります。
そのため、 歩き方を改善するためには、 「足首だけ」ではなく、「歩行全体」を評価する視点 が欠かせません。
痙縮にはボツリヌス療法が有効な場合もあります
ボツリヌス療法(ボトックス)は、 痙縮に対して有効性が認められている治療法です。
実際に、歩きやすさや介助のしやすさが改善する方も多くいらっしゃいます。
ただし、 ボツリヌス療法だけで歩行能力が改善するとは限りません。
筋肉の緊張が変化したあとに、 新しい身体の使い方を学習しなければ、 歩き方は変わりにくいからです。
そのため私は、 医師による治療とリハビリは別々に考えるのではなく、 組み合わせて初めて効果を最大限に引き出せる と考えています。
歩行能力を改善するために、本当に必要な4つの評価
「歩行能力を改善したい。」
そのためには筋力を鍛えることも大切です。
歩く量を増やすことも必要です。
しかし、それより前に必ず確認しなければならないことがあります。
これは17年間、脳卒中患者様のリハビリを行ってきて、 私が最も大切にしている考え方です。
関節が動かなければ、 どれだけ筋力を鍛えても、 正しい歩き方を学習することは難しくなります。
だから私は、 歩行を評価するときに次の4つを特に重要視しています。
① 可動域(ROM)
最初に確認するのは関節の可動域です。
歩くためには、 足関節だけでなく、 股関節や膝関節、 さらには体幹の柔軟性も必要になります。
構造的な制限がある状態では、 身体はその範囲の中でしか動くことができません。
その結果、 代償動作が増え、 歩き方が崩れていきます。
発症後の身体の使い方や姿勢、 筋緊張の変化が積み重なり、 少しずつ拘縮へとつながっていきます。
② 姿勢制御
歩行は、 バランスを崩すことと持ち直す動作の連続です。
そのため、 姿勢が安定していなければ、 身体は無意識に筋肉を緊張させます。
実際に、 姿勢を整えただけで、 足の突っ張りが軽減する方も少なくありません。
足だけを見るのではなく、 骨盤や体幹まで含めて評価する理由がここにあります。
③ 筋力ではなく「協調性」
筋力は歩行に欠かせません。
ただし、 筋力とは単純に「力が強い・弱い」という話ではありません。
歩行で必要な筋力とは
- 必要なタイミングで働くこと
- 必要な強さで働くこと
- 他の筋肉と協調して働くこと
- 遠心性・求心性収縮を使い分けられること
歩行では、 何十もの筋肉が協調して働いています。
一つの筋肉だけを鍛えても、 歩き方が変わりにくい理由はここにあります。
④ 運動学習
歩行能力を改善するためには、 「質」と「量」の両方が必要です。
「質より量」
「量より質」
どちらか一方ではありません。
歩く量が少なければ体力は向上しません。
一方で、 間違った歩き方を繰り返せば、 その歩き方を身体が学習してしまいます。
だからこそ、 正しい身体の使い方を学びながら、 十分な練習量を積み重ねることが重要です。
私は17年間、 急性期・回復期・生活期のすべての段階で、 多くの脳卒中患者様の歩行を評価してきました。
さらに、 IPNFA®認定アシスタントとして、 PNF(固有受容性神経筋促通法)や Functional Kinetics(機能的運動学)の考え方を学び続けています。
その中で強く感じるのは、 歩行は一つの症状だけでは説明できない ということです。
歩行能力を改善するためには、 一人ひとり異なる原因を丁寧に分析し、 最適なリハビリを組み立てることが何より重要だと考えています。
「自分はどこに原因があるのか知りたい」
そう感じた方へ
ここまで読んで、
- 自分は痙縮が原因なのだろうか。
- 拘縮が進んでいるのだろうか。
- 姿勢や歩き方に問題があるのだろうか。
- 今のリハビリは自分に合っているのだろうか。
このように感じた方もいらっしゃると思います。
実際に当施設へ来られる患者様やご家族の多くも、 「何が原因なのか分からない」 という状態で相談に来られます。
歩行は非常に複雑な動作です。
同じ内反尖足でも、 原因は一人ひとり異なります。
だからこそ当施設では、 運動を始める前に、 「なぜ現在の歩き方になっているのか」 を丁寧に評価することを最も大切にしています。
まずは現在の歩行を一緒に確認し、今後の方向性をご提案します。
LIMではどのように歩行能力の改善を目指すのか
当施設では、 「歩き方を見て終わり」のリハビリは行いません。
歩行を改善するためには、 原因を正確に評価し、 その方に合った介入を組み立てること が重要だからです。
評価では、 歩いている場面だけではなく、 立ち上がりや立位姿勢、 片脚支持、 足部の接地、 体重移動なども確認します。
そして、 それぞれの評価結果をもとに、 必要なアプローチを組み立てていきます。
当施設で大切にしているポイント
- 歩行だけではなく姿勢全体を評価する
- 可動域・筋緊張・協調性を総合的に確認する
- 一人ひとり異なる原因に合わせてリハビリを行う
- その場の変化だけでなく、再現できる歩き方を目指す
PNFを用いた姿勢制御へのアプローチ
私はIPNFA®認定アシスタントとして、 PNFの考え方を臨床に取り入れています。
PNFは、 単に筋肉を鍛える技術ではありません。
姿勢を安定させ、 身体全体が協調して動けるように導くための考え方です。
歩行中に必要となる 体幹や骨盤のコントロール、 荷重、 重心移動などを含め、 一人ひとりに合わせたハンドリングを行います。
必要に応じて体外衝撃波も組み合わせます
筋緊張や拘縮の状態によっては、 体外衝撃波を組み合わせることがあります。
目的は、 体外衝撃波そのものではありません。
その後の運動学習を行いやすい状態をつくること です。
歩行能力を改善するためには、 治療を受けることがゴールではありません。
その変化を、 正しい身体の使い方へ結び付けることが重要です。
歩行能力を改善するために、自宅で意識していただきたいこと
ここまで読んでいただいた方の中には、
「では、自宅では何をすればいいのですか?」
そう思われた方も多いと思います。
もちろん、自主トレーニングはとても大切です。
ただし、 「たくさん歩けば良くなる」という考え方だけでは十分ではありません。
歩行能力を改善するために大切なこと
- 身体を動かすための十分な可動域を保つこと
- 歩く量を確保し、体力を維持すること
- 正しい身体の使い方を繰り返し学習すること
- 無理のない範囲で継続すること
歩行能力は、 一つの運動だけで改善するものではありません。
日々の生活の中で、 正しい身体の使い方を繰り返し経験することが大切です。
しかし、 ここには一つ難しい問題があります。
身体は効率よく動こうとします。
そのため、 動かしやすい筋肉ばかりを使い、 本来使いたい筋肉を使えないまま歩くことがあります。
この状態が続くと、 歩き方が変わらないだけでなく、 関節や筋肉への負担が積み重なり、 拘縮や痛みにつながることもあります。
だからこそ、 自主トレーニングは「内容」が重要になります。
まとめ|歩行能力を改善する第一歩は「正しい評価」から始まります
歩行能力を改善するためには、 内反尖足だけを見るのではなく、 歩行全体を評価することが重要です。
この記事のポイント
- 内反尖足は原因ではなく結果として現れていることがある
- 痙縮だけが歩きにくさの原因とは限らない
- 可動域・姿勢・協調性・運動学習を総合的に評価することが重要
- 質と量の両方を意識したリハビリが歩行能力の改善につながる
私は17年間、 急性期・回復期・生活期を通して、 多くの脳卒中患者様の歩行を評価してきました。
その経験から感じるのは、 歩き方には必ず理由があるということです。
その理由を見つけずに、 ただ歩く練習を繰り返しても、 改善につながりにくいことがあります。
反対に、 原因を正しく評価し、 その方に合ったリハビリを行うことで、 歩き方が変化していく方も数多く見てきました。
「今の歩き方、本当の原因を知りませんか?」
当施設では、 一人ひとりの歩行を丁寧に評価し、 現在の状態を分かりやすくご説明します。
「なぜ歩き方が変わらないのか。」
「何を優先して取り組むべきなのか。」
その答えを一緒に整理し、 今後のリハビリの方向性をご提案します。
「こんなに詳しく説明してもらったのは初めてです。」
「自分の身体の状態が初めて理解できました。」
これは、実際に体験リハビリを受けられた方からいただくことが多いお言葉です。
▶ 体験リハビリを予約するまずは現在のお身体の状態を確認し、 あなたに合ったリハビリの方向性を一緒に考えていきます。
あなたはいくつ当てはまりますか?
歩行能力の改善が停滞している方には、 次のような特徴がみられることがあります。
- □ 足が内側に入ってしまう(内反尖足)
- □ つま先が床に引っ掛かることがある
- □ 膝が突っ張りやすい
- □ 歩くとすぐ疲れてしまう
- □ 歩くスピードがなかなか上がらない
- □ 足首が硬く、自分では伸ばせない
- □ ボトックスを受けても歩き方が変わらない
- □ 「もっと歩いてください」と言われるだけで理由を説明されたことがない
大切なのは、 「歩けるかどうか」ではありません。
なぜ今の歩き方になっているのか。 その原因を知ることが、 改善への第一歩になります。
よくあるご質問
Q. 発症から数年経っています。改善は期待できますか?
発症から時間が経過していても、 改善の可能性がある方は多くいらっしゃいます。 重要なのは発症からの年数だけではなく、 現在どのような要因が歩行を制限しているのかを評価することです。
Q. ボトックスを受けていますが、自費リハビリは受けられますか?
もちろん可能です。 ボトックスとリハビリは対立するものではありません。 筋緊張が変化した状態で、 新しい身体の使い方を学習することが重要になります。
Q. 体験リハビリでは何を行いますか?
まずは歩行だけではなく、 姿勢や可動域、 筋緊張、 体重移動、 身体の使い方を評価します。 その上で、 現在の歩き方の原因と、 今後どのようなリハビリが必要かをご説明します。
Q. 介護保険のリハビリと併用できますか?
はい。 介護保険や医療保険のリハビリと併用されている方も多くいらっしゃいます。 現在のリハビリ内容も踏まえながら、 不足している部分を補う形でプログラムを提案しています。

