脳卒中後のぶん回し歩行とは?原因とリハビリを17年の理学療法士が解説
脳卒中後のぶん回し歩行とは?原因とリハビリを17年の理学療法士が解説
「歩くことはできるようになった。」
でも、 歩き方が気になって外に出られない。
人の視線が気になる。
以前のように、 仕事や趣味を楽しめない。
脳卒中後にみられる 「ぶん回し歩行」は、 単なる「歩き方の癖」とは限りません。
麻痺側の足が上がりにくいことだけではなく、 身体全体をどのように支えて、どのように動かしているのか が関係している場合があります。
特に私が歩行を評価するときに注目するのが、 非麻痺側の身体の使い方です。
私は理学療法士として17年間、 急性期・回復期・生活期の脳卒中リハビリに携わってきました。
その中で感じているのは、 同じ「ぶん回し歩行」に見えても、 その背景にある身体の使い方は一人ひとり違う ということです。
この記事では、 ぶん回し歩行がなぜ起こるのかを、 麻痺側だけではなく、 非麻痺側・骨盤・体幹・体重移動などを含めた全身の動き から解説します。
さらに、 LIMでは実際にどのように評価し、 どのように介入するのかについてもお伝えします。
ぶん回し歩行とは?なぜ足を外側へ回して歩くのか
ぶん回し歩行とは、 歩行中に脚をまっすぐ前へ振り出すのではなく、 麻痺側の脚を外側へ大きく回すようにして前へ出す歩き方 です。
英語では 「circumduction gait」と呼ばれます。
脳卒中後の歩行では、 麻痺側の足を前へ出すときに、
- 足先が床に引っかかりやすい
- 膝を十分に曲げにくい
- 足首を適切な位置に保ちにくい
- 脚全体を前へ振り出しにくい
などの問題が生じることがあります。
その結果として、 身体が足を前へ運ぶために、 脚を外側へ回すような動きが現れることがあります。
ここで大切なこと
ぶん回し歩行は、 「脚を外側へ回すこと」そのものが問題なのではありません。
なぜ、そのような動きが必要になっているのか。
そこを考えることが、 リハビリでは重要になります。
ぶん回し歩行は「麻痺側の足」だけが原因ではありません
ぶん回し歩行を見ると、 多くの方は麻痺側の足に注目します。
「足が上がらないから回している」
「膝が曲がらないから回している」
「つま先が引っかかるから回している」
この考え方が当てはまる場合もあります。
しかし、 それだけでは説明しきれないケースもあります。
私が歩行を評価するときに最初に確認すること
- 非麻痺側の足で、 どのように身体を支えているか
- 左右への体重移動を、 どのようにコントロールしているか
- 麻痺側の足を出す前に、 身体のどこがどのように動いているか
ここで重要なのは、 「非麻痺側が悪い」と考えることではありません。
麻痺側だけを見ていると、 歩行全体の関係性を見落とす可能性がある ということです。
人は歩くとき、 片方の足だけを動かしているわけではありません。
身体を支え、 重心を移動させ、 反対側の脚を振り出します。
そのため、 麻痺側の脚の動きを考えるときにも、 反対側の身体がどのように働いているのか を見る必要があります。
なぜ「非麻痺側」を見るのか?
脳卒中後の歩行では、 麻痺側の動かしにくさを補うために、 非麻痺側をより多く使って身体を支えることがあります。
これは、 「良い方の足だから問題ない」 という単純な話ではありません。
非麻痺側の使い方が変化すると、 身体全体の重心移動や骨盤の動きにも影響する可能性があります。
例えば、 非麻痺側へ体重を移したときに、 身体を柔らかく受け止めるように支えるのではなく、 身体を固めるように支えてしまう ケースがあります。
そのような支え方では、 股関節や骨盤、体幹の動きも変化します。
結果として、 反対側の麻痺側下肢を振り出す際に、 骨盤を持ち上げたり、 脚を外側へ回したりする動きにつながっている可能性があります。
もちろん、 すべてのぶん回し歩行がこのパターンになるわけではありません。
ここが非常に重要です。
脳卒中後の「脳の変化」も歩行に関係することがあります
脳卒中後の身体の動きを考えるとき、 筋肉や関節だけではなく、 脳がどのように運動をコントロールしているのか を考えることも重要です。
脳卒中後には、 損傷した側の脳だけではなく、 左右の大脳半球間の活動バランスが変化することがあります。
その中には、 半球間抑制 などの神経生理学的なメカニズムが関係すると考えられている場合もあります。
ただし、 これだけを理由として 「非麻痺側が過剰に働くからぶん回し歩行になる」 と決めつけることはできません。
実際の歩行には、 筋力、筋緊張、関節可動域、感覚、姿勢制御、 運動学習、環境など、 さまざまな要素が関係しています。
だからこそ、臨床では「脳」と「身体」を分けて考えない
脳の働きだけを考えても、 歩行は説明できません。
筋肉だけを見ても、 歩行は説明できません。
脳から出された運動指令が、 実際の身体の動きとしてどのように表れているのか。
その両方を見ることが重要です。
ぶん回し歩行では「骨盤が上がる」ことだけを見ない
ぶん回し歩行では、 麻痺側の骨盤が持ち上がるような動きがみられることがあります。
そのため、 「骨盤を上げている筋肉が原因なのでは?」 と考えたくなるかもしれません。
しかし、 骨盤が上がっているという事実だけでは、 その動きの原因は分かりません。
原因と結果を分けて考える
骨盤が上がっている。
これは「観察された結果」です。
では、 なぜ骨盤が上がる必要があったのでしょうか?
非麻痺側で身体を支える方法、 麻痺側下肢の動かしにくさ、 関節可動域、 筋緊張、 体幹のコントロールなど、 複数の可能性があります。
そのため、 「骨盤が上がっているから骨盤を下げる」 だけでは不十分なことがあります。
臨床では、 動きそのものだけではなく、その動きが必要になった背景 を考えることが重要です。
ぶん回し歩行で確認したいポイント
① 非麻痺側の足で、どのように身体を支えているか
「良い足だから大丈夫」と考えるのではなく、 身体を支えるときにどのような動きが起きているのかを確認します。
② 左右への体重移動をどうコントロールしているか
歩行では、 身体を左右へ移動させながら次の一歩を作ります。
その体重移動がどのように行われているのかを確認します。
③ 骨盤・体幹・頭部がどのように動いているか
脚だけを見ていると、 身体の上部で起きている代償動作を見落とすことがあります。
骨盤だけではなく、 体幹や頭部を含めて全体を確認します。
④ 麻痺側の足を出す前に、何が起きているか
ぶん回し歩行そのものを見るだけではなく、 「足を出す直前の身体」 を見ることも重要です。
どこへ体重が移動しているのか。
身体は安定しているのか。
麻痺側の脚を出すために、 どのような準備をしているのか。
⑤ 関節の動きや筋緊張に問題がないか
もちろん、 身体全体だけを見ればよいわけではありません。
股関節、膝関節、足関節の可動域や、 筋緊張、筋力、随意運動なども確認します。
⑥ 長期間続いた歩行パターンが影響していないか
脳卒中から長期間経過している場合、 これまでの歩行経験によって、 現在の歩き方が定着していることがあります。
ただし、 「長年続いているから変わらない」と決めつけるのではなく、 現在の身体の状態を確認することが大切です。
LIMでは「ぶん回し歩行の原因」をどう評価するのか
LIMでは、 最初から「ぶん回し歩行にはこの運動」と決めることはありません。
まず、 現在の身体と歩行を評価します。
そして、 そこから問題点を仮説として整理します。
① 歩行全体を観察する
まず実際に歩いていただきます。
足だけを見るのではありません。
- 非麻痺側でどのように身体を支えているか
- 左右へどのように体重を移動しているか
- 骨盤や体幹がどのように動いているか
- 麻痺側の足を出す前に何が起きているか
身体全体の関係を確認します。
② 非麻痺側の身体を評価する
私が特に注目するのが、 非麻痺側の身体です。
「良い方の足」だから問題がないとは限りません。
立位や体重移動の中で、 股関節や膝をどのように使っているのか。
身体を支えるときに、 動きながらコントロールできているのか。
それとも、 身体を固めるように支えているのか。
こうした点を確認します。
③ 仮説を立てて、実際に介入してみる
評価した結果から、 「この身体の使い方が歩行に関係しているのではないか」 という仮説を立てます。
そして、 必要に応じてハンドリングなどを用いて、 身体の使い方を変えてみます。
④ 介入後に、もう一度歩いてみる
ここが重要です。
介入したら終わりではありません。
身体の使い方を変えたことで、 実際の歩行がどう変化したのかを確認します。
例えば、 非麻痺側の支え方を調整したことで、 麻痺側の脚の振り出し方が変化することがあります。
もしそのような変化が確認できれば、 非麻痺側の身体の使い方が、 歩行に関係している可能性があります。
逆に、 変化がなければ、 別の要因を考える必要があります。
「ぶん回し歩行だから、この運動」ではありません
「この筋肉を鍛える」
「この筋肉を緩める」
「足をまっすぐ出す」
と最初から決めるのではなく、 まず身体の状態を確認します。
そのうえで仮説を立て、 介入し、 その結果として動きがどう変わったのかを確認します。
その人の身体に合わせて、 必要な介入を考えることが重要です。
足首の内反・尖足も気になっていませんか?
ぶん回し歩行に加えて、 「足首が内側に向いてしまう」 「つま先が下を向いて引っかかる」 「装具がうまく履けない」 といった悩みがある場合は、 内反尖足についても確認してみてください。
あなたの「ぶん回し歩行」は、 なぜ起きているのでしょうか?
「歩けるようになったから、 もう仕方がない」
そう思っている方もいるかもしれません。
しかし、 現在の歩き方には、 その人なりの理由があります。
麻痺側の足の動かしにくさ。
非麻痺側の支え方。
骨盤や体幹の動き。
左右への体重移動。
関節の可動域や筋緊張。
長期間続いた歩行パターン。
さまざまな要素を確認する必要があります。
PNF脳卒中リハビリスタジオLIMでは、 理学療法士がマンツーマンで歩行を評価します。
実際の歩行を観察し、 麻痺側だけではなく、 非麻痺側、骨盤、体幹などを含めて身体全体を確認します。
そして、 必要に応じて身体の使い方を調整し、 その結果として歩行がどう変化するのかを確認します。
「自分の場合は、 何がぶん回し歩行に関係しているのか知りたい」
そう感じている方は、 一度、現在の身体の状態を評価してみてください。
体験リハビリを予約する自宅でぶん回し歩行を練習するときに気をつけたいこと
ぶん回し歩行を改善したいと考えると、 「足をまっすぐ出す練習をしよう」 と思う方もいるかもしれません。
しかし、 足の動きだけを無理に変えることが、 すべての方に適しているわけではありません。
身体を十分に支えられていない状態で、 足だけをまっすぐ出そうとすると、 バランスを崩す可能性があります。
自宅で確認するなら「足」よりも「身体全体」
安全な環境で、 普段の歩き方を少し観察してみてください。
- 麻痺側の足を出す前に、 どちらへ体重が移っているか
- 非麻痺側で身体を固めるように 支えていないか
- 麻痺側の骨盤が大きく動いていないか
- 麻痺側の足を外側へ大きく回していないか
ただし、 これだけで「原因」を判断することはできません。
動画や鏡は「答え合わせ」に使う
自分の歩き方は、 本人からは意外と見えにくいものです。
そのため、 安全が確保できる場合には、 スマートフォンなどで歩行を撮影して確認する方法もあります。
ただし、 動画を見ただけで原因を判断することはできません。
「足が回っている」という結果を見るだけではなく、 その前に身体のどこが動いているのか、 どこへ体重が移っているのかを見る必要があります。
ぶん回し歩行は「歩けるか」だけでは評価できません
脳卒中後のリハビリでは、 「何m歩けるようになったか」 「何秒で歩けるようになったか」 という評価も大切です。
しかし、 生活という視点で考えると、 それだけでは十分ではありません。
例えば、
- 外出することへの不安が減った
- 人の視線を気にすることが少なくなった
- 仕事へ復帰しやすくなった
- 趣味の場所へ出かけられるようになった
- 家族と一緒に外出できるようになった
こうした変化も、 その方にとっては大切な「改善」です。
だからこそLIMでは、 単純に歩行の見た目だけを変えることを目標にはしません。
17年間の臨床経験から、私が大切にしていること
私は理学療法士として17年間、 急性期・回復期・生活期の脳卒中患者さんに携わってきました。
その中で、 歩行が自立しているにもかかわらず、 外出する機会が少なくなっている方も見てきました。
「歩けるから大丈夫」
そう簡単には言えないことがあります。
歩き方が気になる。
転倒が怖い。
人の視線が気になる。
以前のように仕事や趣味を楽しめない。
歩行能力だけではなく、 その人が実際の生活で何に困っているのかを見る必要があります。
そして、 その悩みを解決するためには、 まず現在の身体を正確に評価することが大切だと考えています。
まとめ|ぶん回し歩行は「足だけ」ではなく全身から考える
脳卒中後のぶん回し歩行は、 麻痺側の足だけの問題とは限りません。
麻痺側下肢の動かしにくさだけではなく、
- 非麻痺側の支え方
- 左右への体重移動
- 骨盤や体幹の動き
- 関節可動域
- 筋緊張や筋力
- 感覚や姿勢制御
- 長期間続いた歩行パターン
など、 さまざまな要素が関係している可能性があります。
この記事のポイント
- ぶん回し歩行は、麻痺側の足だけを見て考えない
- 非麻痺側の身体の使い方にも注目する
- 骨盤や体幹を含め、身体全体の動きを確認する
- 「骨盤が上がる」という結果だけでは原因は分からない
- 評価した内容から仮説を立て、介入後の変化を確認する
- 一人ひとりの身体の状態に合わせて介入を考える
ぶん回し歩行を改善したいとき、 最初に考えてほしいのは、
「どうやって足をまっすぐ出すか」
だけではありません。
「なぜ、自分はこのような歩き方になっているのか」
ということです。
その理由を整理することで、 今の身体の状態の中で、 どこに変化する可能性があるのかを考えやすくなります。
ぶん回し歩行で悩んでいる方へ
「もう発症から何年も経っているから」
「歩けるようになったから、仕方がない」
そう決めつける必要はありません。
もちろん、 すべての方の歩き方が同じように変化するわけではありません。
関節の構造的な制限や筋緊張、 麻痺の程度、感覚障害などによって、 必要なアプローチも異なります。
だからこそ、 まず現在の身体を評価すること が重要です。
PNF脳卒中リハビリスタジオLIMでは、 理学療法士がマンツーマンで、 歩行だけではなく身体全体の動きを評価します。
「自分のぶん回し歩行は、 何が関係しているのだろう?」
そう感じている方は、 一度、現在の身体の状態を確認してみませんか。
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